小説『117+』(仮)第十三話 「2005年」

この物語は、2005年の段階で
すでに終了しようとしている。


1988年、とある事件がきっかけで、
謎めいた力を手にした「能力者」たちが大量に出現。
しかも、その能力者たちは、なぜかお互いを排斥しようと殺し合いを始めた。


わからないものには理解しがたい謎の行動。
きっと、能力者たちは、自分の同類を減らすことで、
何かが得られることを知っているからだ。
それがなんであるのかは、能力者たちだけが知っている。


しかし、お互いを排斥し合う中で、連合や組織が少しずつ生まれ始めた。
最大勢力である『果実連合』、謎めいた力を信仰に利用する『白影教団』
『果実連合』を激しく敵対視する少数勢力『HB』


それらはみな
単独で戦うよりも、集団での優位性を優先した結果生まれてきた。
そしてそれらは非常に高い効果をあげ、
単独の能力者は少しずつ姿を消し始めた。


そんななか、もはや全面戦争による解決が最も手っ取り早いと
最後の戦争に備えていた三者だったが、



ヒミコという未知数の存在によって
再び物語は、最初の(ヒミコにとっては)、
そして最後の(それまで長い戦いにかかわってきた三者にとっては)
大混乱が始まった。


彼女の力はどうなっているのか?
仲間にすべきなのか? カモなのか?


各勢力は、突如現れた存在に対して、
だれも答えが出せなかった。






「その答えは、今出るわ」
屋上。
『果実連合』、寺島真奈美がノートパソコン膝の上において、画面を食い入るように眺めている。
映っているのは、花沢という教師と、「118人目」赤羽緋美子だ。
「ここまでは予定通り。あとは赤羽緋美子の実力次第」


「始まった?」
米村は予想外の出来事に戸惑う。
「今始まったってことは…?」
福田の言葉に、米村は唇をかむ。
「エンカウントは、おれと赤羽緋美子じゃなかったのか…!」
「この学校の関係者で、使い手の可能性がある人を探してみる!」


「先生? どうしたの?」
何も知らない、無垢な少女は、担任の教師にただならぬものを感じて、後ずさりしている。
「何でお前なんだ…。何でここにいるんだ…。何で…何で…。
何で俺はこんなことしなきゃいけないんだ…」
花沢の眼からついに涙がこぼれた。
「これが代償だとでも言うのかァァッッ!」





(この文章はフィクションです
実際の人物、団体、地名などとは一切関係ありません)